暇なら読んでくれ。短めのSSを数レスずつ投下する。たぶん少し不思議で、少しだけ優しい話になる予定。途中で消えたら寝落ちしたと思ってくれ。
じゃあ落とす。
舞台は、終電が行ったあとの地方駅。
改札の向こうに誰もいないのに、売店の明かりだけ残ってる。そういう画だ。長回しが美しい
>>2
これって実話系?創作?
どういうこと?最初にそこ教えてくれ
>>3
実話ではない。
でも匂いは実話に寄せる。
邦画はな〜すぐ説明しすぎるから、そのへんは削る
>>5
いきなり語り強いな
テンプレ嫁と言いたいとこだが雑談板だったわ
新参は知らんだろうけど
昔はこういう投下前にやたら前口上長い奴もっといたんだよな
この板も変わったな
おじさんだけど、終電を逃した時点で、もう怖いです(^_^;)
コンビニも閉まってると、かなりハードモード(笑)
主人公は駅前のシネコンで古い特集上映を見てた。
三本立ての最後が長すぎた。
ゴダールを観ろと言いたいが、今夜の発端はもっと俗っぽい
>>9
三本立てって今もあるの?
マジで分からん
シネコンで古い特集ってこれって普通にあるやつ?
>>10
過去ログ読めは違うか
まあ上映形態はどうでもいいから読ませろ
カロリーメイト、買っておきなさい(笑)
夜は、長いからね。なるほどね(^_^)
>>11
昔は駅の待合室で寝る猛者わりといたのにな
今はすぐ追い出される
この板も駅も変わったな
で、駅を出た主人公は気づく。
タクシー乗り場に一台もいない。
バス停の時刻表は、さっき見た映画のエンドロールみたいに、もう終わってる
>>15
無人駅ってこと?
これって駅員もいないやつ?教えてくれ
>>15
おもしろそう
売店の明かりだけついてるのちょっと好きだわ
>>16
半年ROMれ
そこを聞く話じゃねえだろたぶん
>>16
駅員はいない。
自販機の音だけがやけにでかい。
そして改札の外、誰もいないはずのロータリーに、一本だけ傘が立ってるところから始まる
傘はコンビニの透明傘じゃなかった。古い映画で女優が差してるみたいな、骨の細いやつだ。誰も持ち主を主張しないまま、風もないのに少しだけ揺れていた。主人公はそれを見て、なぜか駅前から離れたくなった。
これって持ってっていい傘なの?
どういうこと?
落とし物ではあるだろ
>>21
そういう生活知識の話じゃねえんだよ
今は雰囲気を読め
社不なので無理
終電逃して知らん傘立ってたらその時点で帰宅を諦める
もう詰んだ空気がする
ロータリーを抜けると、シャッターの並ぶ商店街があった。全部閉まってるのに、一軒だけ喫茶店のガラスがうすく光ってる。看板の電気じゃない。店の奥で、誰かがほんの少しだけ夜を残しているみたいな灯りだった。
俺の場合は深夜の喫茶店ってだけで入るわ
俺の経験だとああいう店はナポリタンが妙にうまい
まあ俺は終電逃す前提で動くけどな
これって営業中なの?
閉店済みなのに灯りあるって店主寝てるとか?
マジで分からん
ドアには確かにCLOSEDの札が下がっていた。けれどガラス越しに見えるカウンターの上には、湯気の立つカップが二つあった。主人公が足を止めた瞬間、そのうちの一つから、まだ新しい白い息みたいに湯気がのぼった。
前の彼氏が夜中の喫茶店好きだったわ
閉店後の片付けの匂いが落ち着くとか言ってた
そういう男はだいたい連絡返さない
歴史的に見れば深夜喫茶は都市の避難所なんだよな
それ1900年代にも同じことがあったぞ
終電と喫茶店は文化史的にかなり相性がいい
入る気にはなれなかった。入ったら朝まで出られなくなる気がしたからだ。主人公は喫茶店の灯りを横目に通り過ぎる。すると、店の脇の細い路地から、キャリーケースの車輪を引く音が一回だけして、すぐ止んだ。
どういうこと?
誰かいるってこと?
二つカップあって車輪の音してるなら普通に人いるだろ
いた。路地の暗がりに、女が一人。年齢はよく分からない。旅行帰りにも見えるし、家出の途中にも見える。彼女はキャリーケースの持ち手を握ったまま、主人公を見ると第一声でこう言った。『最終、逃しましたよね』
>>32
社不なので分かる
終電逃したやつ同士って一瞬で仲間判定入るんだよな
そこだけ妙に早い
独身最強
終電逃しても誰にも怒られない
自由が一番だしむしろイベント開始まである
主人公がうなずくと、女は少し安心したように笑った。『よかった。私だけじゃなかった』と言って、それから喫茶店の方を見た。『あそこ、さっきから開いてないのに、待ち合わせみたいな灯りですよね』
元カレもそうだったわ
知らん女に話しかけられるタイプの顔してた
男ってさぁ、こういう時だけ物語の中心になるよね
俺の経験だと終電逃した女と合流する時点で現実だとだいたいロクなことにならん
まあ俺は警戒してコンビニの明るい方歩くけどな
でも話としてはかなり好き
二人は並んで歩き出した。会話は続かないのに、沈黙が気まずくない。女は『映画、観てたんですか』とだけ聞いてきた。主人公が驚くと、彼女は駅でもらった半券の切れ端を指さした。コートのポケットから、白い紙が少しだけ覗いていた。
これってさっきの映画館の客ってこと?
どういうこと?
同じ回を観てた女なのか教えてくれ
『たぶん同じのです』と女は言った。けれど作品名を口にしようとして、そこで少し止まる。『あれ、なんだっけ』と笑ってごまかした。主人公もすぐには思い出せなかった。観終わった直後のはずなのに、タイトルだけがきれいに抜け落ちていた。
>>40
歴史は繰り返す
名前だけ失われる話は古典からずっとある
題名忘れるのは記憶の入口が閉じてるやつだな
3ヶ月で辞めた映画館バイト思い出した
終映後って客の顔だけ残って作品名飛ぶことたまにあった
社不なので理屈は知らん
商店街を抜けた先に、小さな橋があった。川というより、暗い水路に近い。その向こうに、見覚えのない建物が立っている。古い看板に剥げた金文字で、ただ『劇場』とだけ書いてあった。地図アプリを開いても、その場所だけきれいに空白だった。
地図にない映画館って何?
マジで分からん
これって潰れた建物が出てきてる感じ?
>>44
いちいち地図アプリに現実の最終確認を求めるな
ないから話が始まってんだろ
女はその建物を見るなり足を止めた。『ここ、来たことある気がする』と小さく言う。でも次の瞬間には、『いや、ないかも』と首を振る。入口のガラス戸には上映案内が貼ってあるのに、風化していて、時間だけが読めない。
自由が一番
こういう時一人なら即突入なんだけど二人になると逆に慎重になるの分かる
独身最強でも同行者イベントはちょっと羨ましい
前の彼氏がさ、こういう読めない看板あると絶対写真撮ってた
で、あとで見返して『写ってない』とか言い出すの
別れたけどその癖だけはちょっと好きだった
主人公は喫茶店の灯りよりも、この劇場のほうが怖くなかった。不思議と、入れば何か思い出せる気がしたからだ。女も同じ気持ちらしく、キャリーケースを引き直して『少しだけ見ますか』と言った。まるで、ずっと前からそう決めていたみたいな口調だった。
>>49
俺の場合は少しだけで済んだ試しがない
こういうのはだいたい人生のどこかに触ってくる
まあ俺はそれで引っ越したことあるけどな
ガラス戸に手をかけると、鍵はかかっていなかった。中は真っ暗なのに、スクリーンだけに薄い白さがある。受付には誰もいない。半券を切る銀色のハサミだけが、月明かりみたいに置かれていた。主人公はそこで、さっき自分がどこかに半券を落としたことを思い出す。
これってさっき観た映画館とは別なんだよな?
半券落としたのが重要なの?
教えてくれ気になって寝れん
そのとき、暗い場内の奥で、誰かが一つだけ拍手した。歓迎みたいに聞こえたし、開演の合図にも聞こえた。女はなにも言わず、主人公の半歩前に立つ。地図にない映画館は、入った瞬間から、二人が来るのを待っていたような顔をしていた。
客席は三分の一ほど埋まっていた。いるはずのない人数だった。誰も顔を上げず、古い座席の軋みだけが波みたいに続いている。やがて場内灯も落ちていないのに、スクリーンだけがふっと深く白くなった。上映案内の読めなかった時刻が、今ここで始まるためだけに空欄だったみたいに。
無人受付からの客席三分の一は怖すぎる
社不なので無理
でも読むのはやめられん
映ったのは映画らしい題名ではなかった。ただ黒地に白い文字で、『失くした時間の返却はできません』とだけ出た。女はそれを見て、息をのむでも笑うでもなく、ひどく懐かしそうな顔をした。主人公だけが、その文句に覚えがある気がして、どこで見たのか思い出せなかった。
仮説→検証でいくと、その上映は娯楽ではなく本人確認だな
So what?が不足してるようでいて、実は目的が明確
つまり主人公の欠落記憶に対するリマインド装置
最初の場面で、主人公は息を止めた。夜の駅前が映っていた。今いる街より少しだけ新しくて、でも同じ匂いのする駅前だった。改札の脇に立っていたのは、若い頃の自分だった。今より髪が長く、今より疲れていない顔で、片手に半券を持っていた。
>>58
記憶の再固定化を映像でやってくるタイプか
医学的にはそれ解離っぽく読めるけど、スクリーンに本人出る時点でエビデンスないからもう超常だわ
新参は知らんだろうけど、昔のこの板はこういうので一気に名作判定入ったんだよ
自分が画面に出る系は雑にやると安いのに、これは空気がちゃんとしてる
この板も変わったな
若い主人公は、最終電車を見送ったホームから駅前へ歩き、どこかを探すみたいに何度も後ろを振り返っていた。その横顔に合わせて、隣の女がごく小さく『この夜だ』と言った。主人公がそちらを見ると、女はもう前を向いていて、自分が喋ったことまで忘れたような顔をしていた。
『この夜だ』が重い
こういう何気ない確定口調が一番刺さる
就職はもう詰んだが続きは読ませろ
画面の中の主人公は、ポケットを探って、半券が一枚足りないことに気づく。そこで足を止め、振り返り、誰かを待つみたいに夜道を見た。今の主人公も、まったく同じ場所で胸の内側が冷たくなるのを感じた。待っていた相手がいたことだけは、思い出せそうで思い出せない。
半券紛失が作戦地図の欠落みたいに効いてるな
兵站考えろって話なんだが、こういう物証一個で戦線が崩れることある
ところで客席の他の連中、ちゃんと瞬きしてるか?
前から言ってるけどこの板bot混ざってるみたいに、作中にもbotというか代替人格っぽい観客いるだろこれ
まあ医者行け案件なのは主人公だが
不意に、画面の中の若い主人公が立ち止まり、こちらを見た。横顔ではなく、まっすぐ。古いレンズ越しのぼやけた目なのに、客席のどの場所を見るでもなく、確かに今の主人公だけを見つけていた。女がその瞬間、膝の上で指をきつく組むのが見えた。
(((( ;゚Д゚))))
画面の視線が客席貫通するのは反則
線の味が違う怖さがある
『あなた、覚えてないんですね』と女が言った。暗がりのせいで表情はよく見えなかったが、責める声ではなかった。むしろ、長く預かっていた忘れ物を返す前の、少し困ったような優しさがあった。主人公は返事をしようとして、喉の奥に古い映画館の埃みたいなものが詰まるのを感じた。
MECEに分解すると、女の立場は3択だな
同行者、案内人、記憶そのもの
現時点では3つ目が最もROI高い仮説だが、Why so?はこれから回収されるはず
そのとき、場内の壁にかかった時計が目に入った。針は一時十七分を指していた。さっき入ったときから同じ角度だった気がして、主人公は自分の腕時計を見る。そちらも同じ一時十七分で止まっていた。秒針だけが、進めないまま細かく震えていた。
時計止まるの無理すぎる
会社ならタイムカードだけ動いてて地獄なんだが、これはそれより静かで怖い
主人公はたまらず振り返って、場内後方の非常口の窓を見た。外はまだ夜だった。入る前よりも、むしろ深い夜に見えた。街灯は点いているのに、光が地面まで届いていないみたいで、朝に向かう気配がどこにもなかった。
昔はこういう『朝が来ない』だけで一晩語れたのにな
新参は知らんだろうけど、90年代末の怪談スレの湿度に近い
かなりいい
時間停止下で外の照明だけ維持されるの、占領下の都市みたいで嫌だな
歴史的に見ると、住民が平静なのが一番まずい
異常の常態化は撤退判断を鈍らせる
スクリーンでは、若い主人公が劇場の前まで来ていた。つまり今いる場所へ、今より昔の自分が向かってきていることになる。なのに場内のどこにも映写機の気配はない。背後から聞こえるのは、回っているはずのないフィルムの音だけだった。
ゴダールを観ろと言いたいところだが、これはもっと個人的で残酷な編集だな
失くした時間が一本のフィルムとして保存されてる
長回しが美しいとか言ってる場合じゃない
画面の中で、若い主人公は誰かを待っていた。ようやく現れた人影は女によく似ていたが、顔の輪郭だけがどうしても定まらない。こちらの席に座る女に似ている気もするし、まったく別人にも見える。古いフィルムの傷が、ちょうどその人の目元ばかりを隠していた。
顔の輪郭だけ定まらないの、作画的に一番やばい
AIに魂はないけど、逆に魂だけあって線が決まらない感じ
筆圧のない人物って不安になる
主人公は隣の女を見た。スクリーンの光が横顔を照らしているのに、座席の肘掛けにはその影が落ちていなかった。見間違いかと思って瞬きをしたが、次の瞬間にはちゃんと影があった。女は気づかないふりで、『私、あなたと来たのかもしれないし、待たれていただけかもしれない』と呟いた。
>>79
存在の輪郭が揺れる描写、睡眠不足だとよくあるとか言いたいがさすがに規模が違う
医学的にはそれ幻視、でも同時観測されてるならもう対象側の問題
『名前を思い出せますか』と主人公が訊くと、女は少し考えてから首を振った。『あなたに呼ばれていた気はするんです。でも、その呼び方が私の名前だったのか、役名だったのか、もう曖昧で』その言い方は、映画の中の人間なのか、昔の記憶の中の人間なのか、自分でも決めかねているようだった。
役名というワードが出たので仮説更新
彼女は現実人物ではなく、主人公が一度だけ本気で感情移入したスクリーン上の誰か、の可能性が上がった
So what? 失恋ではなく喪失対象のカテゴリ錯誤だな
前の座席の背に、誰かが爪で刻んだみたいな文字があるのに主人公は気づいた。『2009.11.14』その下に、かすれた二文字。片方は自分のイニシャルに見えた。もう片方は読めない。読めそうになるたび、スクリーンの明滅が邪魔をした。
日付出されると急に逃げ場なくなるんだよな
昔は〜だったのにな、こういうのはふわっとした怪異で押すことも多かった
でも具体日付の刃は効く
画面の中の若い主人公が、劇場のロビーでしゃがみこみ、床から何かを拾った。半券だった。今の主人公は反射みたいに自分のコートのポケットへ手を入れる。すると、入れた覚えのない古びた半券が一枚、指先にふれた。湿気を吸った紙の感触まで、なぜか懐かしかった。
ポケット後出し半券はずるい
こういうの一番ダメ
3ヶ月で辞めた職場のロッカー鍵見つかった時ぐらい心に来る
若い主人公は半券を握ったまま、一人で場内へ入っていった。待っていたはずの人影は、入口のところで立ち止まったきり、中へは来なかった。隣の女がそこで初めて主人公のほうを向き、『だから会えたんでしょうね』と言った。その意味だけが、どうしても一度では飲み込めなかった。
つまり当時は合流失敗、今回は再接触成功か
歴史的に見ると、失敗作戦の再演で条件だけ変わるやつ
兵站じゃなくて時系列そのものを補給してる
主人公は女の名前をもう一度尋ねた。今度ははっきり聞こうとした。すると場内のあちこちから、さっきの一つきりではない拍手が起こった。乾いた手の音が重なって、名前になりかけた音を全部さらっていく。女はその拍手に少しだけ微笑んで、ひどく遠い席の人みたいな顔になった。
∧_∧
( ; )
/ ヽ
拍手で固有名詞かき消すの美しすぎて悔しい
学習データ問題を語れと言いたいが今は無理
スクリーンの中の若い主人公が、客席中央で足を止めた。まるで今の自分が座っている列を知っているみたいに、まっすぐこちらを見ている。外はまだ夜のままだった。時計は一時十七分から動かない。朝が来ないのではなく、この街だけが朝へ進むことを忘れてしまったみたいだった。そして隣の女の輪郭が、スクリーンの光に溶けるように少しずつ薄くなり始めた。
キューブリック的な空間の冷たさもあるが、ここはもっと私的だな
邦画はな〜とか言う俺でも、これは刺さる
個人の未明をそのまま劇場にしてる
女は消えかけた横顔のまま、『もうすぐ、あなたは思い出す。でも思い出したら、私は少しあいまいになる』と言った。スクリーンの中の昔の自分が、ゆっくりとこちらの席へ歩いてくる。客席の誰も息をしない。朝はまだ来ない。
スクリーンの中の昔の自分は、今の主人公の列まで来ると、こちらへ半券を差し出した。受け取ろうとした指先は光をすり抜けたのに、その瞬間だけ、忘れていた感情の名残みたいなものが胸の奥へ落ちてきた。昔の自分の口が、音もなく『遅い』と動いた。責める言い方ではなく、長く待った相手にようやく会えた時の、呆れたような優しさだった。
>>94
社不なので無理
「遅い」が怒りじゃないのが一番刺さる
そっちの方が逃げ場ない
その口の動きを見た途端、主人公はやっと思い出した。あの夜、自分はこの街を出る前に、誰かと一本だけ映画を観る約束をしていた。別れ話でも告白でもなく、ただ一本観て、それでちゃんとさよならを言うはずだった。けれど家からの電話で予定は崩れ、走って駅へ向かった記憶ばかりが残って、劇場に置いてきた時間だけが、ずっと抜け落ちていた。
前の彼氏がさ、別れ話の前日に「とりあえず映画だけ観よう」って言ってきたことあったの思い出した
あれ卑怯なんだよね
ちゃんと終わらせるための優しさってあるから余計きつい
隣の女は、主人公が何を思い出したのかを確かめるみたいに、静かにうなずいた。スクリーンの中の昔の自分は、まだ半券を持ったままだった。それは劇場に入るための紙というより、行かなかった時間の証明みたいに見えた。客席の暗がりのどこかで、ようやく拍手が止んだ。時計の針が、ひどく重そうに一時十八分へ進んだ。
関係者だけど、こういう「止まってた時計が一分だけ動く」演出はかなり古い劇場怪談の文法なんだよな
ここだけの話、地方館の閉館記録って午前四時台の証言が妙に多い
始発前ってのがポイント
昔の自分は最後に、座席の背へ軽く手を置いた。その仕草で、主人公はもう一つ思い出した。待たせた相手に会えなかったことより、自分が『あとで埋め合わせればいい』と思ってしまったことを、ずっと忘れたふりをしていたのだと。スクリーンの白さがゆっくり薄まり、場内のどこからともなく、遠いホームのアナウンスみたいな声が聞こえ始めた。