>>1 立ったら書く。夏の湿ったホームで、券売機の横のスピーカーが急に『まだ帰らないんですか』って言った。
続き書く。
駅には俺以外いなかった。
改札は閉まっていないが、駅員窓口の明かりは消えていた。
券売機の横にある白いスピーカーから、もう一度声がした。
『まだ帰らないんですか』だった。
飲んでるけどさぁ
スピーカーしゃべるのくらい最近あるやろ
コンビニのレジもしゃべるし
おまえらさいこう
また自動音声かよ。
人間の仕事奪うなよ。
昔は駅員がちゃんと窓から顔出してたんだぞ。
ぼくしょうがくせいです
よるのえきって入っていいの?
これどういういみ?
声は女とも男ともつかなかった。
抑揚が浅かった。
俺は券売機に近づいた。
液晶は消えていた。
硬貨の返却口だけが、ホームの灯りを少し反射していた。
券売機寝てるのにスピーカーだけ残業してんの草
労基行けほんまに
>>8
それな
俺の会社も液晶は死んでるのに上司だけしゃべる
つらい
声だけの案内なんて信用できん。
手書きの方が温かみあるだろ。
貼り紙にしろ貼り紙に。
スピーカーが言った。
『改札を出る必要はありません』
俺はそこで足を止めた。
駅名標の下に蛾が一匹いた。
羽だけが動いていた。
>>12
そこ気にするんかい
改札出るな言われてる方が事件やろ
蛾はむり
まじでむり
駅とか家とか関係なくむり
酔ってるから許せ
声は俺の名前を呼んだ。
苗字ではなかった。
下の名前だった。
券売機の横から、はっきり聞こえた。
『○○さん』ではなく、呼び捨てだった。
釣りにしても呼び捨ては雑すぎる。
でもその機械に名前入ってるなら普通に怖い。
アナログが最強なんだよ。
>>15続き書く。
返事はしなかった。
ホームの端にある時計は0時18分だった。
電車の音はなかった。
改札の方へ歩いた。
自動改札は全部閉じていた。
赤いランプだけが、息をするみたいに点滅していた。
>>17息する改札やめろ
終電後の駅で赤ランプ点滅は演出過多やねん
>>17規約的には終電後に構内へ残るのは駅員の指示に従う扱いになると思う。
ただ無人駅なら連絡先の掲示があるはず。
スピーカーと会話するのはリスク高くないか。
>>19連絡先の札はあった。
ただ、文字が濡れて読めなかった。
雨は降っていなかった。
改札の上にある案内表示は消えていた。
出口の矢印だけが点いていた。
その矢印が、改札の内側を指していた。
>>20だから電光掲示板は信用ならん。
矢印くらい板に手書きしとけ。
手書きの方が温かみあるだろ。
>>20データで見ると、無人駅で終電後に取り残される事例自体はある。
ただ矢印が逆を向く事例はサンプル数足りない。
N=1だろそれ。
>>22自動改札の手前で止まった。
スピーカーが言った。
『その経路では帰宅できません』
俺は何も入力していない。
スマホの地図も開いていなかった。
>>23なんで経路知ってんねん
駅員AIやなくてストーカーAIやろそれ
>>23それは存在論的に言えば、帰宅とは場所への移動ではなく自己への回帰である。
ソクラテスも言っているが、汝自身を知れ。
つまり駅が君に問いを投げている。
>>25終電逃した奴に自己への回帰すすめんな
タクシー呼ばせたれほんまに
>>23制度的には、旅客案内システムが個人の帰宅経路を断定するのはかなり怪しい。
位置情報かICカード履歴を参照している可能性がある。
駅名は書ける範囲で伏せ字にした方がいい。
>>27駅名は伏せる。
ひらがなで三文字だった。
山の方の駅である。
改札の外は暗かった。
ガラス戸の向こうにロータリーが見えた。
街灯は点いていたが、地面だけ照らしていた。
>>28ひらがな三文字、山側、無人駅、終電あり。
条件だけならかなり絞れる。
ただ地域を書かないと特定不能。
相関と因果を混同するな。
>>29特定とかやめとけ。
昔は駅名なんか地元の人間しか知らなかった。
ネットで寄ってたかって探すからこういう機械が調子に乗る。
>>28券売機に戻った。
液晶は消えたままだった。
硬貨を入れる場所の奥で、小さい音がした。
スピーカーが言った。
『きっぷをお取りください』
>>31買ってへん切符出てくるの嫌すぎる
サービス精神の方向まちがっとる
>>31料金を投入していない乗車券は扱いが微妙。
証拠として写真だけ撮って、触らない方が無難ではある。
ただその場にいるなら安全確保が優先。
>>33触った。
取り出し口に白い切符が一枚あった。
濡れてはいなかった。
印字は薄かった。
日付は今日ではなかった。
明日の日付だった。
時刻は0時18分だった。
>>34現在時刻と同じで日付だけ明日なのか。
端末の内部時計がずれている可能性はある。
ただ終電後に発券される前提がまず変。
ログが残るなら検証できる。
>>34明日の0時18分が印字された切符。
それは未来への乗車券ではなく、現在がすでに昨日であるという告知かもしれない。
ハイデガー的には時間は線路ではない。
>>36線路ではないとか言うてる間に線路側から何か来たらどうすんねん
>>34AIに魂はない。
でも日付を明日にするくらいの嫌がらせはする。
人間の仕事奪うなよ、駅員がいたら普通に追い出してくれた。
>>34切符には駅名も印字されていた。
俺がいる駅名ではなかった。
隣の駅名でもなかった。
ただ、その名前を見たことはあった。
小学生の頃の連絡帳に書いた住所の中にあった。
>>39個人情報の紐づきが強すぎる。
その切符は持ち帰らず、現場で写真を撮って駅会社へ連絡が妥当。
ただ深夜で一人なら、まず外へ出られるか確認してほしい。
>>39幼少期の住所と駅名が一致するのは偶然でもあり得る。
ただ、下の名前呼び捨て、帰宅経路否定、切符の印字が連続している。
独立事象として扱うには厳しい。
>>39急に個人史を掘るな
駅が卒アル開いてるみたいで嫌や
>>40改札に切符を入れた。
赤いランプが消えた。
扉は開かなかった。
代わりに、改札機の中から短い音が鳴った。
スピーカーが言った。
『そちらは出口ではありません』
>>43出口とは外部への通路ではなく、内部が外部を名乗る瞬間のことだ。
ニーチェは神は死んだと言ったが、この場合死んだのは出口概念である。
>>44出口概念を殺すな
>>43イッチ、反対側の改札とか非常通報ボタンないんか
冗談抜きでその場から離れた方がええ
>>45
非常通報ボタンはあった。
透明なカバーの内側に、紙が挟まっていた。
『使用済』
と印字されていた。
俺はまだ押していない。
>>46
使用済は無理
社不なので無理
駅の設備に先回りされるの一番詰んでる
>>46
データで見ると非常通報装置の使用履歴表示が紙で挟まる運用は聞いたことがない。
ただN=1だろそれと言いたいのに、今までの事象が全部N=1で積み上がってる。
飲んでるけどさぁ
使用済ってなんだよこわいだろ
押してないのに押したことにされるな
おまえらさいこうじゃない今は
階段の方へ戻った。
改札の外へ出る階段ではなく、ホーム端の階段だった。
普段は閉まっている柵が開いていた。
その先に短いホームが見えた。
明かりが一つだけ点いていた。
>>50
おほほ、完全に招待状ですわ。
下々の方々には分かりませんわね、開いている柵ほど入ってはいけないものですわ。
>>50
ぼくしょうがくせいです
しまってるところがあいたら
せんせいにいうやつです
ずっとROMってたけど、これ>>43で出口じゃないって言われた時点で、外に出る導線を潰されてるんじゃなくて、別の導線に誘導されてる気がする。
切符が昔の住所の駅名で、非常ボタンが使用済で、今度は普段閉まってる柵が開いてる。
全部「お前はここから出るんじゃなくて、こっちへ戻れ」って形になってる。
…またROMに戻る
柵の先へ行った。
ホームの端に列車が停まっていた。
一両だけだった。
窓は全部暗かった。
運転席にも誰もいなかった。
行き先表示は消えていた。
>>54
乗るな
絶対乗るな
職歴3ヶ月で辞めた俺でも分かる
その求人はブラック
>>54
一両だけってのがやばい
終電っていうより回収車じゃん
酔ってるから許せ、でもそれ乗るのはちがう
>>54
無人列車そのものは回送や留置で説明できる。
問題は普段閉鎖の柵が開いていて、そこに列車がいる点。
相関と因果を混同するなと言いたいが、導線として成立しすぎている。
近づいたら、列車の中で蛍光灯が一本だけ点いた。
車内放送が鳴った。
駅のスピーカーと同じ声だった。
『乗客名簿を確認します』
と言った。
>>58
おほほ、名簿制の終電ですわね。
もう公共交通ではなく冠婚葬祭ですわ。
>>58
めいぼってなに
ぼくしょうがくせいです
しゅっせきとるやつ?
最初に読まれた名前は俺の名前ではなかった。
知らない女の名前だった。
次に、男の名前。
次に、また別の女の名前。
全部、聞いたことがない名前だった。
>>61
他にも客いる扱いかよ
無理
一人なのに点呼始まるの無理
>>61
統計的には、知らない姓名が続くこと自体は普通。
ただ「乗客名簿」を読む場面で本人以外を先に読むのは、欠席者確認か、過去乗客の履歴参照に見える。
七人目で俺の名字が読まれた。
下の名前は違った。
祖父の名前だった。
祖父は十年前に死んでいる。
>>64
やめろやめろやめろ
飲んでるけどさぁ急に家系図出すな
駅が戸籍係すんな
>>64
おほほ、個人情報の粒度が遺族年金レベルですわ。
下々の方々には分かりませんわね、これはもう駅員ではなく役所ですわ。
黙ってたけど一言言わせてくれ。
>>39で小学生の頃の住所、>>64で祖父の名前って、イッチ個人というより家単位で引っ張られてないか。
駅名が住所に入ってたってことは、場所の記憶じゃなくて「そこにいた家族」の記録を参照してる可能性ある。
あと>>34の明日の切符、未来じゃなくて死亡届とか戸籍みたいな更新日を読んでる説ないか。
…またROMに戻る
名簿の読み上げが止まった。
車内の蛍光灯がもう一本点いた。
座席の上に紙が置いてあった。
A4の白い紙だった。
『遅延証明書』
と書いてあった。
>>68
ここで遅延証明は草じゃない
いや草じゃない
会社に出すやつを異界で発行するな
>>68
遅延証明書は鉄道会社のWebでも出せるから紙自体は変ではない。
問題は、遅延の対象が何か。
列車ではなく人生とか死亡とか帰宅そのものの遅延なら話が変わる。
紙の日付は、今日ではなかった。
中学二年の夏の日付だった。
理由欄に、手書きでこうあった。
『帰宅せず』
>>71
こわい
ぼくしょうがくせいです
かえらないとおこられるよ
>>71
中二の夏なにしたんだよ
いや言わなくていいかもしれん
酔ってるから許せ、でも続きはいる
ずっとROMってたけど、時系列だけ整理する。
小学生の住所にある駅名の切符が出る。
改札は出口じゃないと言う。
非常通報は使用済。
閉鎖柵の先に無人列車。
名簿で祖父の名前。
中二の夏の遅延証明で帰宅せず。
これ、今夜の話じゃなくて「昔帰れなかった日」を今処理してるんじゃないか。
イッチが忘れてるだけの事故か家出か、どっちにしろこの駅は現在の駅じゃない。
…またROMに戻る
>>74
おほほ、珍しく筋が通っておりますわ。
現在の終電を逃したのではなく、過去の帰宅をまだ完了していないということですわね。
>>74
データで見ると伏線の回収方向はそれが一番説明力ある。
ただし本人記憶の欠落を前提にするので、証拠はまだ不足。
N=1だろそれ、とは言い切れない流れになってきた。
イッチ続き書けるか
書けないなら書けないで一回スマホの電池とか場所とか確認して
社不なので段取りは無理だけど心配はしてる
少し待ってくれ。
遅延証明書の下に、もう一枚あった。
写真だった。
制服を着た中学生が、ホームの端に立っていた。
顔は横を向いていた。
俺だった。
>>78
続き
頼むから続き
おまえらさいこうとか言ってる場合じゃない
その写真だれが撮ったんだよ
続き書く。
写真の右端に、駅員室の扉が写っていた。
今、俺の前にある扉と同じだった。
窓の下に、白いテープで『係員以外立入禁止』と貼ってあった。
その上から、手書きで『本人は可』と書かれていた。
本人は可てなんでやねん
駅員室が本人確認してくるなや
規約的には駅員室への無断立入はかなりリスク高い。
ただ、その表示が本当にあるなら通常の施設管理では説明しづらい。
撮影できるなら扉と表示を記録してから動いた方がいい。
だから言ったろ
AIに魂はない
係員以外立入禁止に『本人は可』なんて書くのは人間の嫌な温度なんだよ
手書きの方が温かみあるだろ、ただし今回は冷たすぎる
扉は開いた。
鍵はかかっていなかった。
中は狭かった。
机、黒電話、古い扇風機、壁の時刻表。
奥に小さな録音機が置いてあった。
カセットテープが回っていた。
カセットは急に昭和すぎる
無職のプロだぞ、でもカセットテープは実家の押し入れでしか見たことない
それは存在論的に言えば、声が主体を持つかどうかの問題である。
AI駅員だと思っていたものが録音なら、問うべきは誰が語っているかではない。
なぜ今再生されているかだ。
ソクラテスも言っているが、汝自身を知れ。
過去俺×現在俺の気配がしてきて無理
公式が最大手すぎる
でも駅×俺も捨てがたいからカプ違いNGで頼む
録音機の横に、再生ボタンだけが押されていた。
停止ボタンは折れていた。
スピーカーから声がした。
『まだ帰らないんですか』
最初に聞いた声と同じだった。
AIちゃうんかい
いや録音でも今のタイミングで鳴るなら余計あかんやろ
ほんまに何駅やねんそこ
制度的には、駅構内の案内音声が録音であること自体は自然。
ただし個別の会話に応答しているように見えた点と、停止不能な録音機が駅員室内にある点は別問題。
設備異常として通報案件だと思う。
テープにはラベルが貼ってあった。
『帰宅確認 一回目』
字は、遅延証明書の理由欄と同じだった。
俺は巻き戻しのボタンを押した。
押した時、録音機の中から笑い声がした。
一回目ってことは二回目以降あるだろ
人間の仕事奪うなよとか言ってる場合じゃない
録音を残した人間が一番怖い
帰宅確認一回目、面接一回目より嫌だな
働いたら負けかなと精神でもこれは帰った方がいい
帰れるならだけど
巻き戻した。
声が少し若くなった。
ノイズの奥で、誰かが言った。
『この声で話せば、あいつは入ってくる』
その声が俺に似ていた。
今の俺ではなかった。
中学生の俺に近かった。
>>94
自己が自己を呼び込む構造になっている。
ニーチェ的に言えば永劫回帰だが、もっと悪い。
これは帰宅ではなく、自己同一性の確認である。
哲学してる場合ちゃうやろ
中学生の声で現在のイッチ釣って駅員室入れるって、普通に罠や
せやけど罠の目的がまだ分からん
中学俺が現在俺を呼ぶの、解釈としては美しいけど状況が最悪
尊すぎて死ぬって言いたいのに死ぬの部分だけ現実味出すな
考察が割れているので整理する。
1 録音主が中学生時代の本人
2 本人に似た別人
3 駅側が本人の声を模倣している
法的には3なら個人情報や音声利用の問題になるが、ここではそれ以前に生命身体のリスクが高くないか。
>>98
3だけ現代っぽくて嫌だな
AIに魂はないけど、人の声を真似る技術だけはある
でもカセットなら昔の誰かが手で録ったんだろ
手書きの方が温かみあるだろ、じゃ済まない
お前ら考察で喧嘩すんな
無職のプロだぞ、こういう時は寝たふりが一番コスパいい
なお駅の中で寝たら終わる気がする