駅から家に帰る途中、いつも閉まってる店に明かりがついてた
看板には『月曜を少し遅らせます』って書いてあった
これって実在する店?
『月曜を少し遅らせます』ってどういうこと?
マジで分からん
月曜デバフ重すぎるから店側でナーフしてくれるんだろ
有能NPCじゃん
日曜の夜に喫茶店へ吸い込まれる人生、なかなか下々ですわね
おほほ
でも看板は少し良いですわ
こっちにはそんなのないわ
日曜夜に開いてるのコンビニと精米所くらい
店は商店街の端にあった。
昼間に通るとシャッターが半分錆びていて、営業しているところを見たことがなかった。
その夜だけ、曇ったガラスの向こうが薄く黄色かった。
>>6
何時くらい?
日曜の終わりって23時とか?
それとも夕方?
時間は二十三時を少し過ぎていた。
駅前のスーパーは閉まっていた。
雨は降っていなかったが、道路だけ濡れていた。
店の前に立つと、コーヒーの匂いがした。
道路だけ濡れているの、嫌な感じですわね
月曜が先に通った跡みたいですわ
商店街あるだけ都会だろ
こっちはシャッター街ですらなく更地だが
看板って手書き?
『月曜を少し遅らせます』って店名じゃなくて文なの?
教えてくれ
看板は黒板だった。
白いチョークで書かれていた。
月曜を少し遅らせます。
その下に小さく、コーヒー五百円、とあった。
五百円で月曜が遅れるなら会社員が列をなしますわ
おほほ、資本主義の抜け穴ですわ
500円なら入る
イオンのフードコートでコーヒー飲んでもそんなもんだしな
扉の横に、古いベルが下がっていた。
押すものではなく、扉を開けると鳴る形だった。
中から低い声がした。
まだ開いています。
>>17
店主いるの確定?
客は見えた?
あとなんで入ろうと思ったんだ、怖くね?
客は見えなかった。
窓ガラスが曇っていて、椅子の背だけが並んでいた。
入ろうと思った理由は、帰りたくなかったからだった。
月曜になる部屋へ戻るよりは、少しだけましに見えた。
>>19
それは分かる
日曜23時の自室、ラスボス前より空気重い
分かってしまうのが悔しいですわ
月曜前夜の布団、もはや棺ですわね
東京モンには分からんだろうな
田舎の日曜23時は月曜どころか世界がもう寝てる
取っ手に手をかけた。
金属は冷たかった。
中の声が続けて言った。
私も月曜が嫌いでね。
そこで扉を開けた。
ここまでが1話目
続き書く。
扉を開けると、ベルが一度だけ鳴った。
思ったより狭い店だった。
カウンターが六席、窓際に二人掛けの席が三つ。
壁には絵も写真もあったが、時計だけがなかった。
時計なしはもうギミック部屋なんよ
セーブポイント探せ
時計ない店とか終わりだろ
どうせ出たら月曜どころか火曜になってる
時計ないのちょっと羨ましい
社不なので時間が見えるだけで詰む
店内は暖かかった。
コーヒーの匂いがした。
カウンターの奥に、白いシャツの男が立っていた。
年齢は分からなかった。
若くもあり、老人にも見えた。
男は俺を見ると、空いている席を指した。
年齢不詳マスター、ブランディングとして強い
まず顧客体験のアジェンダ共有します
>>29店入って即アジェンダは追い出されるぞ
無職のプロだぞ俺は空気で分かる
客はいた。
窓際に一人。
カウンターの端に一人。
奥の席に、スーツを着た女が一人。
誰もスマホを見ていなかった。
誰も時計を見ていなかった。
ただ、湯気だけを見ていた。
スマホ見てないの怖いけど分かる
月曜前のスマホって求人とか上司の通知とか出るから無理
全員デバフ解除待ちのNPCみたいで草
話しかけたらサブクエ始まるやつ
お前ら呑気だな
湯気見てる客なんて全員なんか失った後だろ
店主が水を置いた。
メニューはなかった。
何にしますか、と聞かれたので、コーヒーを、と答えた。
すると窓際の客が、小さく言った。
日曜を一杯。
日曜を一杯でなんか刺さった
社不だから月曜はいらないけど日曜も足りない
日曜を一杯、プロダクト名として強い
KPIは月曜到達率の低減でコンセンサス取りたい
>>35注文システム独特すぎる
攻略見ないと初見で詰む店
店主は驚かなかった。
はい、とだけ言って、棚から青い縁のカップを取った。
カップに注いだのはコーヒーではなかった。
薄い金色の液体だった。
窓際の客はそれを両手で包んだ。
金色の液体とかもう戻れないやつだろ
どうせ飲んだら記憶で支払うんだよ
金色で日曜ならビール説ある
働いたら負けかなと思想の正統派ドリンク
>>42日曜の終わりにビール飲んだら月曜バフじゃなくて吐き気デバフなんだよ
窓際の客は、会社員風の男だった。
ネクタイを緩めていた。
男は一口飲んで、目を閉じた。
もう一度だけ、子供を風呂に入れる声を聞きたい、と言った。
店内の誰も笑わなかった。
無理
こういうの無理
3ヶ月で辞めた俺でもこれは無理
もう終わりだよこの国
子供風呂に入れる声すら日曜の残り香扱いかよ
未練がオーダーに変換される店か
顧客ニーズの解像度が高すぎる
カウンターの端の客は、老婆だった。
背筋が伸びていた。
店主が、いつものですか、と聞いた。
老婆はうなずいた。
日曜の夕方、五時半。
味噌汁の匂いを少し。
そう注文した。
味噌汁の匂いはずるい
無職のプロでも実家の夕方には勝てない
注文がもう料理じゃなくて時間帯なんよ
喫茶店のUIしてない
日曜の夕方五時半って一番きつい
笑点の音で人生のログアウト始まる
>>52笑点終わったら実質月曜だからな
お前ら呑気に飯食ってる場合じゃない
奥のスーツの女は、ずっと鞄を抱いていた。
指先だけが白かった。
店主が近づくと、女は顔を上げた。
送らなかったメールを一通。
宛先は消したままで。
そう言った。
送らなかったメール、刺さるな
ASAPで対応しなかった人生のチケットが残ってる感じ
送らなかったメールある
退職代行のサイト開いたまま寝た夜とかある
社不なので無理
>>54未送信メールはクエストアイテム欄に残り続けるやつ
捨てられないし使えない
メール送らないのは得意分野だわ
俺クラスになると応募フォームも送信直前で閉じる
これ客全員、日曜に置いてきたもん頼んでるだろ
どうせOPも何か注文させられる
俺はコーヒーを出された。
黒くて、普通の匂いがした。
店主は俺の前に置いてから言った。
初めての方には、まだ日曜はお出しできません。
俺が理由を聞くと、店主は少しだけ笑った。
初回制限あるの草
日曜アンロック条件なに?常連度?課金?
店主は言った。
ここは、月曜に行く理由を一つ思い出すまで閉まりません。
誰かが小さく息を吐いた。
店の外では雨が降り始めていた。
>>62
月曜に行く理由って言い方が嫌にリアルだな
前の会社では日曜夜に理由が全部消えた
>>62
閉まらない店とか怖いけど
月曜に行く理由を思い出せないのはもっと怖い
社不なので無理
>>62
行く理由を一つ、ですのね
帰らない理由ではなく
そこが嫌ですわね
マジレスするとその店、労基署の出張所だぞ
月曜を遅らせる代わりに有休を一日吸う
紙の伝票に書く注文なんだろ
こういうのは手書きの方が温かみあるだろ
続き書く。
店主は、俺の前に小さな伝票を置いた。
薄い紙だった。
端が少し湿っていた。
鉛筆も一緒に置かれた。
>>68
注文票というより退職届に見える
前の会社では紙渡された時点でだいたい詰みだった
俺は何も頼んでいないと言った。
店主は、頼むものはもう来ています、と言った。
その時、隣の席の男がこちらを見た。
日曜の残りを飲み干した顔だった。
>>71
日曜の残りを飲み干した顔
下々の方々には分かりませんわねと言いたいところですが
これは分かってしまいますわ
>>71
茶化そうと思ったけど無理だわ
続けてくれ
鉛筆なのがいい
スマホで入力だったら台無しだ
手書きの方が温かみあるだろ
伝票には、すでに一行だけ書いてあった。
月曜に返すもの。
その下は空白だった。
俺は鉛筆を持ったが、何も書けなかった。
>>75
月曜に返すもの多すぎる
メール
書類
元気
社会性
全部無理
>>75
返すものって借りたものだけじゃないんだよな
期待とか席とか社員証とか
それブラックだぞって言いたいのに言えない
店主は、俺の手元を見ていた。
急がなくていいと言った。
この店では、月曜だけが急いでいる。
客の誰も笑わなかった。
>>78
月曜だけが急いでいる
嫌な名文ですわね
おほほと言えませんわ
>>78
釣りだとしてもここで笑わせに来ないの強い
黙って読むわ
誰も笑わない掲示板って珍しいな
昔はパソコンなんかなくても、沈黙だけは伝わったんだよ
俺は店内を見回した。
スーツの女は、未送信のメールを畳んでいた。
老いた男は、白い飯を少しずつ食べていた。
学生は、湯気だけを見ていた。
誰も帰る支度をしていなかった。
>>82
帰る支度って一番つらい
日曜の終わりにカバン持つだけで終わる
>>82
全員まだ月曜に行けないんだな
わかる
前の会社では日曜の夜に靴を玄関に出せなかった
店主が棚の下から、別の伝票を取り出した。
古いものだった。
紙の色が変わっていた。
俺の前に置かれた。
そこには、父の名前があった。
>>85
ここで身内の伝票ですの
それは反則ですわ
古い紙に名前が残ってるのきついな
データなら消せるけど紙は残る
手書きの方が温かみあるだろ、とは今は言いづらい
父は三年前に死んだ。
日曜の夜だった。
月曜の朝、俺は会社に行った。
忌引きの連絡をする前に、始業のチャイムを聞いた。
そのことを、誰にも言わなかった。
>>90
それは会社に行く理由じゃなくて
行かない理由だっただろ
前の会社ではとか言えないわ
>>90
なんで行ったんだよって言いたいけど
行くんだよな
そういう時ほど行くんだよな
>>90
お父様の死より始業チャイムを優先したのではなく
そうするしかなかったのですわね
嫌な社会ですわ
>>90
いつものノリで嘘認定したかったけど
これはできん
父の伝票には、こう書いてあった。
息子の月曜を一度だけ休ませる。
字は父のものだった。
最後の方だけ、線が震えていた。
>>95
字が震えてるのが一番くる
AIに魂はない
こういう線は出せない
>>95
父ちゃん……
社不とか言ってられん
それは休めよ
>>95
息子の月曜を休ませるって
親が最後に書く注文として重すぎる
それブラックだぞ、人生が
俺は伝票から目を離せなかった。
父は、俺が日曜の夜に黙るのを知っていた。
電話で元気かと聞かれるたび、普通だと答えていた。
普通ではなかった。
>>99
普通ですわ、と言う時ほど普通ではありませんわね
下々の方々には分かりませんわね
いえ、これは皆分かりますわ