>>1 立ったら書く。残業中、デスク横のパキラの鉢に小さな封筒が刺さってた。中身は『一身上の都合』だった。
昔は観葉植物がスレ立てする側だったのにな
この板も変わったな
データで見ると、職場の植物の8割は人間より先に限界を迎える
ソースは俺の前職のポトス
続き書く。
封筒は白ではなかった。
少し黄ばんだ、給与明細の封筒を半分に切ったような紙だった。
鉢の土に、割り箸で刺してあった。
このコピペ思い出した
上司「何が不満なんだ」
パキラ「水」
上司「他には」
パキラ「光」
上司「成長できる環境は用意した」
パキラ「日が当たらない」
中身を開いた。
紙はA4を四つ折りにしたものだった。
字は小さかった。
ボールペンの黒だった。
宛名は総務部長殿だった。
メールじゃなくて紙なの偉い
最近の若い植物は全部チャットで済ませるからな
総務部長宛なら正式文書の可能性がある
押印は?
根印とかある?
新参は知らんだろうけど、昔この板でサボテンが退学届出したスレあった
あれも最後総務が出てきた
読み上げる。
退職願
このたび、一身上の都合により、来月末日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。
日付は今日だった。
名前は書いていなかった。
無記名はよくない
でも鉢から出てるなら本人確認済みだろ
植物労基案件としては、まず日照時間と水やり頻度の記録が必要
あと冷房直撃の有無
テンプレ貼っとくわ
・水が少ない
・光がない
・空気が悪い
・上司が鉢を蹴る
・新人がコーヒーを注ぐ
・なぜか会議に同席させられる
コーヒー注ぐやついるよな
昔はパソコンなんかなくても植物に水くらい分かった
>>20
コーヒーはpH的に毎日だとまあまあ負担
ただし因果は慎重に見ろ
相関と因果を混同するな
俺の職場のゴムの木、忘年会の翌日に土から枝豆出てきたことある
紙の下に追伸があった。
追伸。
私物はありません。
鉢は会社備品です。
ここで少し笑いそうになった。
備品が退職できるなら椅子も辞められる
俺の腰のデータ的には椅子はもう退職済み
昔は椅子の方から社員を選んでたんだよ
この板も変わったな
封筒を戻そうとして、鉢を少し動かした。
受け皿の下にメモがあった。
付箋だった。
黄色で、角が土で黒くなっていた。
付箋には一行だけあった。
水やり当番表を確認してください。
社員名が三人、横に小さく並んでいた。
全員、もう会社にいない人だった。
>>31
水やり当番表って紙か?
ラミネートしてないならコスパ悪いだろ
水かかる前提の書類だぞ
>>31
全員いないの怖すぎるだろ
どうせ水やり係から順に辞めたんだろ
もう終わりだよこの会社
続き書く。
当番表を探した。
給湯室の入口に貼ってあったはずだった。
白いマグネットで止めてある、エクセルを印刷した紙だった。
水やりって完全に名もなき家事だよな
育休3ヶ月取った時も思ったけど
誰かがやってる前提の仕事ほど消える
付箋から給湯室へ移動する流れ、長回しが美しい
邦画はな〜こういう沈黙をすぐ説明台詞にする
昨日乗せた客がな
観葉植物の水やり忘れて上司に怒られたって新宿通りで愚痴ってたわ
水より人間の顔色見てたって言ってた
給湯室に行った。
当番表はなかった。
白いマグネットだけが二つ残っていた。
紙を剥がした跡が、長方形に薄く残っていた。
>>38
跡だけ残るのリアルすぎる
人も当番表も辞めたら跡だけだぞ
お前ら呑気だな
マグネットだけ残すな
百均にあるぞとかそういう話じゃなくて
紙だけ消えるのが一番嫌な消え方
マグネットの下に、うっすら字が写っていた。
水やり 月水金
担当
その下は読めなかった。
紙のインクが壁に少しだけ移っていた。
月水金の時点で家事感ある
誰も褒めないけどやらないと枯れる
ワンオペ大変と同じ構造だわ
>>41
壁に転写された当番表、タルコフスキーっぽい
時間が染みになってる
デスクに戻った。
パキラの鉢のそばに、枯れた葉が三枚落ちていた。
さっきは気づかなかった。
床の配線の影に重なっていた。
枯れ葉三枚なら捨てる前に土に戻せ
と思ったけど今回はそういう節約の話じゃなさそう
三人いなくて枯れ葉三枚
もう答え出てるだろ
どうせ無理だろこのスレも救いない
葉の形が少し変だった。
丸まって、先端が細く折れていた。
一枚目は、名札のように見えた。
黒い部分が文字に見えた。
名札って嫌だな
深夜の大手町通りで見た退館証の束思い出したわ
会社出る時だけみんな同じ顔になるんだよ
スマホのライトを当てた。
枯れた葉の葉脈が、文字みたいに浮いた。
一枚目は「佐伯」に見えた。
二枚目は「三好」に見えた。
三枚目は「加納」に見えた。
>>49
社員名じゃん
しかも当番表の三人と一致してそうで嫌だな
名もなき家事が名前を取り返してる
葉脈で名簿作るのコスパ良すぎて怖い
紙もインクも不要
でも人件費は消えてる
>>49
植物に名前を記録される職場
人事より信用できるだろ
もう終わりだよこの国
ここでライトを当てる演出はキューブリックなら正面対称で撮る
鉢、葉、社員名
逃げ場がない構図
三人とも知っていた。
佐伯さんは経理だった。
三好さんは営業事務だった。
加納さんは情シスだった。
全員、俺が新人の頃にいた。
>>54
職種バラバラなのがきついな
部署じゃなくて会社全体の話になってきた
佐伯さんは、よくパキラに水をやっていた。
紙コップで少しずつやっていた。
根腐れするから一気にやるな、と言っていた。
俺はそのとき、根腐れという言葉を初めて聞いた。
根腐れって言葉がもう職場に刺さってる
上だけ元気そうに見えて下が死ぬやつだろ
紙コップで水やりはコスパ悪くない
量を測れるし無料だし
問題はその人がいなくなった後の運用だな
>>56
一気に仕事振るなって話だろ
根が腐る前に人が腐る
どうせ上は葉っぱしか見てない
三好さんは、葉を拭いていた。
コピー用紙を濡らして、埃を取っていた。
誰にも頼まれていなかった。
電話を取りながらやっていた。
>>60
電話を取りながら葉を拭くカット、生活の情報量がある
ゴダールを観ろと言いたいがこれはもう職場映画だ
誰にも頼まれてないのに回ってる作業が一番危ない
家庭でも職場でも名もなき家事多いんだよ
昨日乗せた客がな
会社の観葉植物だけ青々としてるとこは残業多いって言ってた
人間が帰れないから世話できるんだとよ
加納さんは、パキラの向きを変えていた。
窓の方に葉が寄るから、週に一度だけ鉢を回すと言っていた。
残業のとき、よく俺の横でサーバーのログを見ていた。
鉢回すだけなら無料
でも気づく人がいなくなると一気に偏る
管理コストってそういうことか
>>64
光の方に寄る植物の方が健全だわ
人間は残業の方に寄せられる
もう終わりだよ
新人の頃、俺はその三人に何度も助けられた。
経費精算の書き方。
電話の取り次ぎ方。
VPNが切れたときの戻し方。
全部、正式な研修にはなかった。
>>67
それも名もなき教育だな
育休3ヶ月取った時の引き継ぎ資料もそうだけど
書いてない仕事ほど人に乗る
正式な研修にないものだけで会社が成立してるの、いい脚本ならここで観客が黙る
付箋をもう一度見た。
社員名が三人、横に小さく並んでいた。
佐伯 三好 加納。
その下に、薄い鉛筆の跡があった。
鉛筆なら消せるからコスパいい
とか言ってる場合じゃないな
消せるように書いた名前ってことだろ
鉛筆の跡だけ残ってるの最悪
どうせ消したやつは覚えてない
消された側だけ残る
角度を変えると読めた。
「次は誰が水をやるのですか」
そう書いてあった。
鉛筆はかなり薄かった。
>>73
それ客から会社への質問みたいだな
誰が回すんですかって
深夜の六本木通りでよく聞くやつだわ
次は誰が、って重いな
当番表が消えたんじゃなくて引き継ぎ先が消えたんだろ
>>73
ここで疑問文なのがいい
告発じゃなくて問いになってる
長回しの最後に空席を映す感じ
席を見回した。
佐伯さんの席は、今は共有プリンタ置き場だった。
三好さんの席は、派遣さんの仮席になっていた。
加納さんの席は、段ボールが積まれていた。
>>77
人がいた場所が物置になるの早すぎる
どうせ退職理由も全部一身上の都合で処理されたんだろ
共有プリンタ置き場にするなよ
机一個の固定費を回収したつもりで
記憶を処分してるだけだろ
新人時代のことを思い出した。
金曜の夜だった。
俺が終電を逃して、デスクで固まっていた。
佐伯さんがコンビニのおにぎりを一つくれた。
三好さんがタクシー代の申請方法を教えてくれた。
加納さんが、パキラの葉を一枚取って、しおりみたいに俺の手帳に挟んだ。
タクシー代の申請方法教える人はだいたい自分も何度も終電逃してる
昨日乗せた客も霞が関の交差点で領収書握ったまま寝てた
手帳を探した。
引き出しの奥にあった。
古い手帳だった。
ページの間に、茶色くなった葉が一枚残っていた。
葉脈はまだ、読めなかった。
続き書く。
葉は手帳に戻した。
折ると粉になりそうだった。
パキラの鉢を持って、会議室の方へ行った。
結論から言うと会議室が本丸に決まってるだろ
人が消えた会社で一番息苦しいのは会議室なんだよ
データで見ると会議室の植物は窓際率と放置率が高い
ただしソースは弊社なのでN=1だろそれ
会議室は三つあった。
A会議室。
B会議室。
応接兼倉庫。
廊下の照明は半分だけ点いていた。
人感センサーが、俺の後ろで順番に消えた。
人感センサーって言葉がもうアウト
人以外の存在を感知しない前提なの差別だろ
多様性を尊重しろ
会議室ってだいたいデバフ部屋なんだよな
入った瞬間に士気-30、発言権-20、眠気+50
リアルはクソゲー
A会議室に入った。
長机がロの字に並んでいた。
ホワイトボードには、先週の数字が残っていた。
隅にゴムの木があった。
鉢皿の下に、封筒が一枚あった。
鉢皿の下に封筒ってのがいい
メールじゃなくて封筒
手書きの方が温かみあるだろ
封筒は茶色だった。
表には何も書かれていなかった。
中には便箋が一枚入っていた。
「退職願
一身上の都合により
これ以上、議事録だけを聞くことはできません」
はっきり言って正論だよ
議事録だけ聞かされる人生なんて退職に決まってんだろ
統計的には会議の大半は植物にとって無益
二酸化炭素は得られるが精神的コストが高い
便箋の右下に、小さく名前があった。
ゴムの木。
その下に、もっと薄い文字があった。
「佐伯」
名前の上書きはアウト
植物の退職願に人間の名前が残ってるの、会社が個人を吸収してる感じで無理
佐伯さんの魂がゴムの木にバインドされてるやつじゃん
装備品に前所有者の呪い残るタイプ
B会議室に移った。
ここは窓がなかった。
プロジェクターの青い待機画面だけが壁を照らしていた。
棚の上にサンスベリアが三つ並んでいた。
窓なし会議室に植物を置くのは合理性がない
データで見ると生育環境として破綻してる
一つ目の鉢を持ち上げた。
封筒があった。
二つ目にもあった。
三つ目にもあった。
封筒の厚みは、それぞれ違った。
きたな
三連退職願に決まってるだろ
会社終わりなんだよ