『冷たい麦茶、あります』
午前2時、山奥の駅で光っていたのはその自販機だけだった。少し書く。
はい好き
午前2時の無人駅とかもう勝ち確やんwww
自販機が話しかけてきた時点で帰れや
なんで聞く体勢入ってんねん
ホームには屋根が半分だけあった。
ベンチは濡れていた。
雨は止んでいたが、線路の砂利だけがまだ光っていた。
自販機は待合室の横にあった。
無人駅のベンチ濡れてるのあるあるすぎる
誰も拭かないし屋根が微妙に仕事しない
彡(゚)(゚)「麦茶だけ点灯してる自販機、打線の4番感ある」
ボタンはほとんど消えていた。
コーヒーも、水も、聞いたことのない栄養飲料も暗かった。
ただ一つだけ、麦茶の欄が白く光っていた。
『冷たい麦茶、あります』
最初は音声案内だと思った。
麦茶だけ残ってるの地味に助かるの腹立つわ
そこはホラーならおしるこやろ
地方の自販機、謎に冬でも冷たい麦茶だけ生き残るからな
あれ誰が買ってんだ
財布を出した。
小銭は百円玉が二枚と十円玉が三枚だった。
値段は百四十円。
硬貨を入れる前に、自販機が言った。
『こんばんは。遅くまでお疲れさまでした』
礼儀正しいwwww
怖いより先に職場に置きたいんだが
>>12
自販機の方が会社の上司よりちゃんとしてるやん
ほんまに
うちの最寄り無人駅は券売機すら挨拶しないぞ
てか券売機がない
彡(゚)(゚)「こんばんは言えるだけでOPS.900ある」
声は女の人でも男の人でもなかった。
古い駅の放送みたいに、少しだけ割れていた。
だが機械の音ではなかった。
言葉の端に、相手を起こさないような間があった。
その表現すき
相手を起こさないような間ってなんだよ夜だから許せ、刺さったわ
都会の人は無人駅って聞くと怖がるけど
地元民からすると終電逃したら詰みのただのベンチ置き場やで
俺は返事をしなかった。
ポケットの中でスマホを握った。
圏外だった。
駅名を示す看板は、薄い蛍光灯で青白く見えた。
『お帰りですか』
自販機はそう聞いた。
圏外の駅あるある
ホーム端でスマホ掲げると1本立つけど、電話した瞬間消える
>>24
お帰りですか、がもう怖い
帰る方法をお前が握っとる言い方やんけ
いやでも麦茶売ってくれるなら会話くらいするわ
この時間帯最高だなwww
>>27
ハードル低すぎるやろ
知らんおっさんが麦茶持ってても話しかけそう
俺は、終電を逃しただけだと答えた。
自販機の中で、缶が一本だけ転がる音がした。
まだ買っていないのに、取り出し口が光った。
『それは大変でしたね』
声は、改札の窓口で聞くような丁寧さだった。
>>29
買ってないのに出してくれるなら神
こっちにはそんなのないわ
怖いより便利って感想になる雑談板、終わっとるけど好きやわ
取り出し口には、缶ではなく紙の切符が入っていた。
濡れていない、古い硬い切符だった。
行き先の欄は空白だった。
自販機が言った。
『お代は、あとで結構です』
続き書く。
硬券出てくる自販機って何だよ
こっちにはそんなのないわ
いやこっちにもないわ
技術的に言うと〜、自販機の取り出し口から紙を出す機構自体は不可能じゃない
でも硬券サイズを湿気らせず保持してるのは普通に意味わからん
俺は切符をつまんだ。
厚みがあった。
端が少し丸く、古い紙の匂いがした。
自販機は黙っていた。
切符の行き先欄は、空白のままだった。
『お飲み物をお選びください』
表示窓の中で、冷たい麦茶のランプだけが点いていた。
切符出しといて飲み物選ばせるの草
深夜のテンションで言うけど接客順番バグってるwww
その場面、光源が自販機だけなら絶対撮りたい
青白い蛍光灯と麦茶ランプでボケ味が違う
レンズ沼抜けられん
財布を出した。
小銭は百円玉が二枚と、十円玉が四枚あった。
麦茶は百二十円だった。
硬貨を入れる口は、暗かった。
俺が百円玉を一枚入れると、機械の奥で水が落ちるような音がした。
山奥の自販機って小銭入れた時の音やたら響くよな
人いないから余計に聞こえる
水が落ちる音はおかしいだろ
普通はコインメックの検知音とソレノイド音
にわか乙、って言いたいけど怪談だから許す
十円玉を二枚入れた。
表示は変わらなかった。
百二十円のままだった。
戻しレバーを押したが、何も返ってこなかった。
『お代は、あとで結構です』
同じ声だった。
俺は買うボタンを押した。
押したああああ
この時間帯最高だなwww
いや最高じゃない、怖い
返金されない時点で普通にクレーム案件なんだが
山奥だと連絡先のシールも日焼けで読めないやつ
缶が落ちた。
取り出し口に手を入れると、冷たかった。
麦茶だった。
細い缶ではなく、昔の少し太い缶だった。
ラベルの麦の絵は色あせていた。
缶の側面に、駅名が印字されていた。
側面印字の缶、物撮りしたら解像度で年代わかりそう
印刷の網点とか見たい
F1.4最高とか言ってる場合じゃない
缶に駅名印字って地域限定ノベルティならあり得るけど、自販機内に残ってるのは賞味期限的にアウト
仕組みとしては在庫管理死んでる
印字されていた駅名は、今の駅名ではなかった。
俺がさっき見た看板とは違う。
『遠鳴駅』
そう読めた。
缶の下のほうには、小さく昭和五十八年とあった。
旧駅名パターン来たな
市町村合併とか路線短縮で名前変わるの地方あるある
遠鳴って名前がもう山側っぽい
百名山80座制覇してると分かるが、山奥の駅は集落名より峠名や沢名が残ることある
縦走ルートは昔の地名の方が通じる場合もある
昭和五十八年の麦茶は飲むなwww
夜だから許せ、でも飲むな
飲むつもりはなかった。
缶を握っていると、指先だけが冷えていった。
冷蔵庫から出したばかりの冷たさだった。
プルタブは古い形ではなかった。
今の缶と同じだった。
ただ、印字だけが古かった。
そこ重要
缶の規格は現代で印字情報だけ過去なら、単なる古い在庫じゃない
ラベル生成か、見る側の認識を書き換えてる可能性ある
認識を書き換える麦茶とか嫌すぎる
こっちにはそんなのないわ
いや東京にもないだろうけど
自販機が言った。
『切符をお持ちください』
俺は左手に硬券、右手に麦茶を持っていた。
『お代をいただきます』
硬貨は、もう入れたと言った。
少し間があった。
『お金では、足りません』
出た
お金では足りません系の丁寧語、いちばん嫌なやつwww
光ってる自販機が一拍置いてそれ言うの、絵面が強すぎる
暗部持ち上げたら奥に何か写ってそう
午前2時の山奥なら気温も下がるし、判断力落ちる
軽装登山はやめろと言いたいが、終電逃しただけでも山間部は詰む
何が必要なのか聞いた。
自販機の蛍光灯が、一度だけ暗くなった。
『ご乗車には、記憶が必要です』
駅の向こうで、風が木を揺らした。
『どなたかに、連れてきていただいた記憶はありますか』
ここで帰りの記憶じゃなくて連れてきた記憶なの嫌だな
昔この駅に来たことある前提みたいになってる
技術的に言うと〜、本人認証に近い
顔や指紋じゃなくエピソード記憶を鍵にしてる感じ
倫理は終わってる
俺は、この駅に来たことはないと答えた。
たぶん、そうだった。
少なくとも、自分で電車を降りた記憶はない。
自販機は言った。
『では、お預かりしているものをお返しします』
「たぶん」が入ったぞ
本人が確信できてない描写、ピントが手前から奥にズレる感じで怖い
お預かりしているものって、もう誰かが先に預けてるんだよな
OPのじゃなくて家族のやつっぽい
取り出し口の奥で、また缶が転がった。
二本目ではなかった。
俺の手の中の麦茶が、少しへこんだ。
缶の表面に細い筋が入り、そこから水滴が流れた。
水滴は、字になった。
『なつえ』
名前出た
しかも水滴で名前出すな怖い怖い怖いwww
水滴で文字を出すなら表面の撥水加工をパターン化すれば一応できる
でも手の中でへこむのは無理
ググレカス以前に物理が嫌がってる
なつえさん、山間部の集落に普通にいそうな名前だな
古い登山口の茶屋とか駅前商店の名簿にありそう
なつえは、祖母の名前だった。
母方の祖母である。
俺が小学生のころに亡くなった。
俺は缶を落としそうになった。
自販機は言った。
『お忘れ物です』
祖母きたか
旧駅名と昭和五十八年と家族の記憶がつながり始めてる
祖母の名前が水滴で出るの、写真に撮っても写らないタイプのやつだろ
解像度じゃなくて見る人依存の情報
忘れ物ではないと言った。
祖母のことは覚えている。
家にあった仏壇も、夏に出された麦茶も覚えている。
そこまで考えて、喉が鳴った。
麦茶の缶は、まだ開けていなかった。
夏に出された麦茶でつながるのやめろ
飲み物が急に記憶の媒体になるの、夜だから刺さる
嗅覚と味覚は記憶のトリガーとして強いから、麦茶はかなり合理的
技術的に言うと〜、これはUIが飲料の形をした記憶検索
UIって言うなw
でもばあちゃん家の麦茶って確かに味じゃなくて台所の暗さまで思い出すんだよな
俺は缶を開けた。
炭酸ではないのに、小さく音がした。
匂いは麦茶だった。
飲むと、舌より先に、手のひらが熱くなった。
駅のホームが、別の場所に重なった。
飲んだあああ
昭和五十八年印字の祖母水滴麦茶を飲むなwww
ホームに別の場所が重なる描写いいな
多重露光っぽい
フィルムでやったらボケ味が違う
古い待合室が見えた。
木のベンチに、若い女の人が座っていた。
膝の上に、白い布の包みを置いていた。
顔は見えなかった。
けれど、俺はその人が祖母だと分かった。
木の待合室が残ってた時代なら、山の駅は生活路線と登山口の両方だったはず
百名山のアプローチ駅でも、朝だけ人が多くて夜は無人みたいな場所ある
膝の白い布の包み、赤ん坊か弁当か遺骨かで怖さ変わる
でもこの流れだと家族関係の何かだよな
>>48の昭和五十八年が祖母の若い頃なら、OPの母親世代と時期が合うかも
ここ数字ちゃんと置いてるの伏線っぽい
女の人は、誰かを待っていた。
待合室の時計は、午前二時を指していた。
外は明るかった。
夏の昼のようだった。
それなのに、時計だけが今と同じ時刻だった。
女の人は、包みを抱え直した。
午前2時なのに夏の昼、変な夢の整合性で嫌すぎる
この時間帯最高だなwwwって言いづらくなってきた
時計だけ現在で光だけ過去なの、露出が合ってない写真みたい
白飛びしてるのに影が夜のままのやつ
待合室の入口に、駅員が立っていた。
帽子を深くかぶっていて、顔は見えなかった。
駅員は祖母に言った。
『切符はありますか』
祖母は首を横に振った。
駅員は、自販機と同じ声で言った。
『では、何を置いていかれますか』
自販機の声が駅員と同じなの確定か
山奥の無人駅って、無人になる前の気配が残るからこういう話と相性悪すぎる
軽装登山はやめろ、あと終電も逃すな
祖母は、駅員を見上げた。
『何を置けばいいんですか』
駅員は少しだけ首を傾けた。
『ここへ来た理由です』
待合室の外で、白い光が強くなった。
ここへ来た理由を置いていけって、もう切符ちゃうやん
人生の一部やんけ
彡(゚)(゚)「乗車賃、重すぎる」
草って言おうとしたけど普通に怖いわ
駅員は言った。
『帰りたい場所のことを、ひとつ』
祖母は包みを見た。
白い布の端から、小さな指が出ていた。
赤ん坊だった。
赤ん坊か
帰りたい場所を子どもごと抱えてるのしんどい
家族神話うざいとか言ってる場合じゃなくなってきた
HSP気質なんで、白い布から指が出る描写だけで胸がきゅっとした
これ置いていくのが記憶なら残酷すぎる
お前らまだ気づいてないのか
知り合いの元国鉄関係者が言ってたけど、廃線になる前の駅には記録に残らない臨時便があったんだよ
これマスコミは絶対報じないぞ
おじさん今は静かにしてくれ
臨時便とか言うてる空気ちゃうねん
自販機の明かりが、ホームの向こうで点滅した。
今いる俺の前の自販機も、同じ間隔で点滅していた。
取り出し口の奥から声がした。
『投入してください』
ファッ!?
過去の駅員と今の自販機が完全に同期しとるやんけ
祖母は赤ん坊を抱き直した。
『この子のことは、置いていけません』
駅員は答えなかった。
待合室の柱時計だけが、かち、と鳴った。
置いていけません、で泣きそう
親ガチャ失敗民だけど、こういう親の覚悟みたいなのは刺さる