【悲報】コンビニ焼き芋、前世どころか山そのものを在庫管理していた
金曜夜、コンビニで買った焼き芋が突然『山を守る芋』を名乗り始めたスレ。民話、ホラー、法律、医学、資本主義が全部ごちゃ混ぜになった結果、最終的にレジ裏の山へ連れていかれる怪異譚になってしまう。
金曜夜の帰り道、袋の中から声がした。『わしはかつて、山を守る芋であった』。続ける。
結論から言うと疲労に決まってんだろ
金曜夜の焼き芋はだいたい喋るんだよ
袋を開けた。
焼き芋は紙袋の底で湯気を立てていた。
『山には名を呼んではならぬ沢がある』
そう言った。
要するに封印具なんだよ
七本の杭の一本がコンビニで焼かれてる時点で山はもう終わってる
焼き芋は言った。
『ひとつ抜ければ獣が起きる。ふたつ抜ければ道が戻る。みっつ抜ければ腹が減る』
三つ目だけ急に生活感があった。
スマホのコンパスを開いた。
針が回り続けた。
焼き芋の湯気が画面にかかっていた。
『まだ山が迷っておる』
そう言った。
焼き芋は最後に小さく言った。
『裏に山が来ておる』
窓を開けた。
コンビニの看板だけが見えた。
少し待ってくれ。
焼き芋を持って部屋を出た。
廊下の蛍光灯が一本だけ消えていた。
エレベーターは一階ではなく、B1を示していた。
この建物に地下はない。
存在しないB1に降りるな
利用規約にない階は脆弱性だぞ
店員はいなかった。
レジの画面には「山」とだけ表示されていた。
ホットスナックのケースは空だった。
焼き芋の機械だけが低く唸っていた。
焼き芋を袋から出した。
皮が少し裂けていた。
中の黄色が、火ではなく月のように見えた。
『ここは山ではない』
『山が、ここを覚えておる』
焼き芋が急に重くなった。
『ここで、わしは掘られた』
足元を見ると、土の中からレシートが出ていた。
日付は今日だった。
商品名は「山」。
さらに奥へ進んだ。
木々が途切れた。
そこにコンビニの裏口があった。
白いドアに、古い注連縄がかかっていた。
ドアの向こうから、電子レンジの終了音がした。
通りすがりだけど
買う、返す、戻る、まで全部レジ処理なんだと思う
山は神域じゃなくて在庫管理されてる
店員が言った。
「お客様、温めますか」
焼き芋が返事をした。
「もう温まっている」