【閲覧注意】空室の壁からレス番号を読む声、未投稿レスまで先読みしてしまう
隣の部屋から毎晩聞こえる『次スレ立てろ』の声。最初は騒音トラブルかと思われたが、空室確認、古い電話線、押入れのノートと進むにつれ、スレそのものが“読まれる側”になっていく。
最初はテレビかと思った。でも壁に耳を当てると、確かに誰かがレス番号を読み上げている。今夜、確認しに行く。
録音は試した。
スマホを壁に当てた。
再生すると換気扇の音しか入っていなかった。
耳を当てると声は聞こえた。
午前1時31分。
声はこう言った。
「じゅうなな、そこ心配するんかい」
その時点で、俺は壁から耳を離した。
午前0時37分。
折り返しが来た。
隣室は空室だった。
今年の二月から入居者はいないと言われた。
現在、募集も止めているらしい。
午前1時24分。
壁の中で、紙をめくる音がした。
声がした。
七十五番、関係者だけど。
そう聞こえた。
まだ七十五番はない。
関係者だけど、これは配線だけではないと思う
音の伝播なら遅延や混線はある
でも未投稿の文言を拾う理由がない
ここだけの話、掲示板側のキャッシュでも説明できない
紙ではなかった。
ノートだった。
何冊も重なっていた。
表紙は日焼けして、端が波打っていた。
一番上に、雑談板、と書かれていた。
めくれたページには、九十二番まで書かれていた。
最後の行は、壁の声が九十二番で一回切る、と言った。
俺がさっき書いた文章と同じだった。
ノートの余白に、赤い鉛筆で書かれていた。
次スレ立てろ。
次スレ立てろ。
次スレ立てろ。
同じ文字がページの端まで続いていた。
ページの途中に、別の筆跡があった。
このスレは終わらせない。
終わるなら次を立てる。
次を立てないなら、壁から呼ぶ。
そう書かれていた。
一番の本文は、途中で止まった。
今夜、確認しに行く。
そのあと、声は別の文を足した。
今夜、続きを書きに行く。
便箋の続き。
弟へ。
今日は百まで行ったから、明日は百一から。
途中で寝てもいい。
次スレを立てたら、起きていることにする。
最後の方のページを読んだ。
兄の字。
弟へ。
もし読めなくなっても、次スレだけは立てる。
次スレがあれば、まだいることにする。
壁の向こうからではなかった。
紙の奥からだった。
ありがとう。
それだけ聞こえた。
二百九。
二百十。
二百十一。
まだ書いていない番号まで、紙の下に透けていた。
俺の字ではなかった。
最後の行に、未投稿レス、と書かれていた。
その横に、1件。
見ている間に、2件になった。
続き書く。