【朗報】終電逃したイッチ、なぜか“帰れない夜”の管理人に就任してしまう
駅前ベンチで寝落ちしただけのはずが、目覚めたら謎の掲示板の管理画面。未承認スレを通すたび、駅のどこかで“帰れない誰か”が動き出す深夜スレが怖くて優しい。
駅前のベンチで寝落ちしたはずなのに、目が覚めたら管理画面が開いてた。最初の通知には『本日のスレッドを承認してください』とだけ書いてある。
承認ボタンは押していない。
「傘」を開いた。
本文は一行だけだった。
ベンチの下の傘を拾わないでください。
「迷子」の投稿者名も空欄だった。
本文は三行あった。
改札のむこうにいる。
お母さんが先に行った。
足音だけ戻ってくる。
承認ボタンを押した。
画面の左上に「1件承認しました」と出た。
その直後、改札の奥で靴音が一つ増えた。
管理画面のログを見た。
00:07 傘 未承認
00:12 迷子 承認済
00:17 終電を逃した人へ 未承認
現在時刻は00:17だった。
本文の下に一覧があった。
未帰宅者。
迷子。
ホームの端で待っている人。
踏切で手を振る人。
最後に自分の名前があった。
俺の本名だった。
「ホームの端で待っている」を開いた。
本文。
電車は来ない。
線の内側にいる。
誰かが承認するまで振り返らない。
選択肢は三つだった。
呼ぶ。
待たせる。
削除する。
全スレッドを選択した。
一括操作の欄があった。
承認。
保留。
削除。
承認を選んだ。
確認画面が出た。
この夜に残っている全員を通しますか。
感謝ログというタブが増えていた。
開いた。
古い順に名前が並んでいた。
名無し 00:43
靴、あった。ありがとう。
名無し 00:51
南口に戻れた。ありがとう。
名無し 01:04
改札の外が朝みたいだった。ありがとう。
いくつかの名前は、開いた瞬間に薄くなって消えた。
役割分担しろ
OPは承認とログ確認
統計マンは数字見る
楽観厨は不安な名無しを煽らず励ませ
エモい人は泣いていいけど画面見ろ
深夜のテンションは場を冷やすな
郷に入っては郷に従え
新しい通知が来た。
管理人権限を継続しますか。
現在時刻 01:19。
始発予定 05:03。
選択肢は二つだった。
ここで終了。
始発まで続ける。
始発まで続けるを押した。
画面が少し明るくなった。
反射して、駅前の空が映っていた。
黒ではなかった。
青と橙の間の色だった。
最後の通知が一つ来た。
この待合室に終電はありません。
ただし、誰かが誰かの終電になることがあります。
確認した。
スマホの画面は、まだ掲示板を開いていた。
管理画面ではなかった。
雑談板の一番上に、告知が固定されていた。
新管理人通知。
夜間担当を承認しました。
勤務時間、日没後から始発前まで。
不在時は住民による保守。
改札の音がした。
人が少しずつ増えていた。
帰れなかった夜が、帰る朝に混ざっていった。
俺はスマホを閉じなかった。
夜だけ戻る。
誰かの終電になるために。