【閲覧注意】夏祭りで出会った謎の少女、10年前の事故と繋がってしまう
小さな神社の夏祭り帰り、見知らぬ浴衣の女の子に「来年も来てね」と声をかけられたイッチ。何気ない怪談スレかと思いきや、話は10年前の事故と町内会の記憶へ繋がっていく。
創作か実話かは最後に書く。とりあえず、俺はその子と今日初めて会ったはずだった。
俺は立ち止まった。
女の子も少し離れて止まった。
迷子かと思って、家はどこか聞こうとした。
その前に女の子が言った。
「来年も来てね」
女の子は神社の裏道を指して言った。
「そっち、まだ通れる?」
俺は、通れると思うと答えた。
すると女の子はまた聞いた。
「風鈴、まだ鳴ってる?」
近い、という言葉で祖母の家を思い出した。
俺の今の家は反対方向だった。
ただ、子供のころの帰り道なら、その裏道が近かった。
女の子は俺の今の帰り道ではなく、昔の帰り道を言っているようだった。
今、写真を見返した。
鳥居を撮った写真が一枚ある。
参道の端に、紺色の浴衣らしいものが写っていた。
顔は分からない。
ただ、俺が女の子に会った場所より前の写真だった。
写真を見ていて、もう一つ思い出した。
祖母の家の風鈴の下に、古い写真が飾ってあった。
額に入った集合写真だった。
夏祭りの日に撮ったものだと聞いたことがある。
そこにも、紺の浴衣の女の子がいた気がする。
亡くなった。
母は、その話をするときだけ声が小さくなった。
俺には、あんたは何も悪くないと言った。
それを言われるたびに、俺は余計に何かを忘れている気がした。
裏道に入る手前で、近所の人に会った。
昔から知っている米屋の爺さんだった。
俺の顔を見て、少し笑った。
それから女の子を見て、笑うのをやめた。
電話はした。
母は最初、祭りに行ったことを少し怒った。
それから、俺が祖母の家に向かっていると言うと黙った。
女の子のことは、言う前に母が聞いた。
「紺の浴衣の子?」
母の声は母だった。
母は、女の子についていくなと言った。
でも、置いて帰るなとも言った。
意味が分からず聞き返すと、母は昔と同じことを言った。
「あんたは何も悪くない」
俺は電話を切らずに、爺さんに近くへ来てもらった。
女の子は裏道の入口で待っていた。
俺が近づくと、女の子は祖母の家の方ではなく、川の方を指さした。
「先に、謝りに行こう」
その声を聞いて、俺は十年前に自分が何を言ったか思い出しかけた。
続き書く。
川沿いには、昔の灯籠流しで使った石段があった。
今は柵がついていて、下まで降りられないようになっていた。
女の子は柵の前で止まった。
俺は、その場所を見て思い出した。
十年前、俺はそこで女の子に言った。
「先に行ってて」
女の子は柵の向こうを見ていた。
俺は謝った。
十年前、先に行っててと言ったこと。
戻るのが遅れたこと。
大人を呼べなかったこと。
女の子は振り向かなかった。
「いいよ」
そう言った。
爺さんが後ろで手を合わせていた。
母は電話の向こうで黙っていた。
女の子は、俺に巾着を渡した。
中には、祭りの短冊が一枚入っていた。
何も書かれていなかった。
女の子は言った。
「来年のこと、書いて」
女の子は短冊を巾着に戻した。
それから、下駄の鼻緒を直すような仕草をした。
俺が目を離したのは一瞬だった。
爺さんが俺の肩を掴んだ。
前を見た時、女の子はいなかった。
柵の前に、片方の下駄だけが残っていた。
町内放送は、夜になると音が少し割れる。
子供の頃、その割れた声を聞くと祭りが終わるのだと思った。
今年も同じだった。
名前は呼ばれなかった。