【怖すぎ】終電で未来の自分に「まだそこを選ぶな」と言われた結果、駅の掲示板がバグる
夏の終電、隣に座った男が自分の名前を呼び、まだ入るなと告げる。会社、湊、退職届、そして南砂町へとつながる不可解なスレが話題に。
眠気で終点まで行きそうになった時、隣の男が俺の学生証を見て『まだその会社に入るな』って言った。書き溜め少しある。
首都圏だった。
路線名も今は伏せる。
終点の二つ前で、男は俺に言った。
まだその会社に入るな。
入ったら、夏に戻れなくなる。
漢字は聞いた。
湊だった。
水辺の湊。
男は、俺が聞き返す前にそう言った。
それから、あいつは笑っている時ほど危ない、と言った。
俺は、湊が死ぬのかと聞いた。
男はすぐには答えなかった。
車内の広告を見ていた。
死ぬのは一人ではない、と言った。
それから左手を握った。
俺は、なぜ今の俺に言うのか聞いた。
男は、何度も同じところに戻ったからだ、と言った。
戻るたびに、少しずつ覚えているものが減る。
最後まで残ったのが、入社式の日付と湊の名前だった。
男は名刺を出した。
古い名刺だった。
角が丸くなっていた。
会社名は黒い線で塗りつぶされていた。
部署名も黒く塗られていた。
名前だけが残っていた。
俺の名前だった。
ずっとROMってたけど、ここで翌日の面談が出てくるの嫌すぎる。
二週間後の最終面接が本番だと思わせて、その前にもう会社側と接触する予定がある。
未来の男が『まだその会社に入るな』じゃなくて『まだ』をつけたの、入社日だけじゃなくて接触のタイミングまで含んでる気がする。
学生証を見て言ったのも、学生でいられる最後の分岐を確認したってことだろ。
…またROMに戻る
黙ってたけど一言言わせてくれ。
『一身上の都合』って、自分の都合に見せるための定型文なんだよな。
それが一行だけ違うなら、自分の都合じゃなくなった可能性がある。
湊の名前だけ残った未来で、退職理由が変わるなら、たぶんそこに湊が入ってる。
『湊を残して』とか『湊のため』とか、そういう文章になったんじゃないか。
書類の一行が変わるだけで、戻る理由が変わってる。
表示は一度消えた。
黒い板になった。
次に点いた時、行先ではなく日付が出た。
二〇三六年八月三日。
俺は封筒を開けた。
紙は一枚だけだった。
退職理由の欄を見た。
一身上の都合により。
そうではなかった。
湊を、入社させないため。
そう書いてあった。
寝息は俺のものに聞こえた。
録音の最後に、男の声が入っていた。
まだそこを選ぶな。
それだけだった。
録音はそこで終わっていた。
再生した。
駅のアナウンスが入っていた。
声は俺のものでも、湊のものでもなかった。
最後に一つだけ聞こえた。
南砂町。