【悲報】配信者の引退配信、終わった後の“閉じられないタブ”が一番キツい説
平日の夜に飛んできた短い通知ひとつで、部屋の空気ごと変わる。そんな“引退配信を見届けた夜”を描いたスレが、静かなのに妙に刺さると話題になっていた。
SSっぽくいく。平日の夜、通知ひとつで部屋の空気が変わるあの感じを思い出しながら書く。数レスごとに投下するから、重かったら茶々入れてくれ。
昨日乗せた客がな、環七通りから中野坂上の交差点までずっと無言でスマホ見てたんだよ
信号待ちで顔だけ青く光ってて、ああ今日は誰かの夜が変わったんだなって思った
配信の通知ってあの顔になる
通知が来たのは、風呂入る前にスマホだけ見ようとした瞬間だった。
『21時からお知らせがあります』
たったそれだけ。
なのに指先が先に冷える。
文が短い時の方がだめなんだよ。言い訳も絵文字もないと、余白に悪い予感が全部入ってくる。
21時ちょうど、暗転が切れて、いつもの部屋が映った。
見慣れた背景。棚。ぬいぐるみ。マグカップ。
でも本人の座り方だけが違った。
画面の真ん中にいるのに、もう半分いないみたいな座り方だった。
『こんばんは』
最初の一言、少しだけ息が浅い。たぶん、聞いてる全員がそこを聞き逃さなかった。
少し雑談してから入るのかと思った。
天気とか、今日食べたものとか、いつものどうでもいい話を一回挟むのかと思った。
でもその日は違った。
二、三個コメントを拾って、マグカップに触って、置いて、目線を少しだけ下げてから言った。
『今日は、みんなにちゃんと伝えたいことがあります』
その『ちゃんと』で、腹の底がすっと冷えた。
『この活動を、引退します』
言い直しも、濁しもなかった。
卒業でも区切りでもお休みでもなくて、引退。
画面の中では一秒も経ってないのに、こっちの部屋だけ時間が遅れる。
エアコンの音が急にうるさくなって、コメント欄は流れてるのに、何も読めない。
言葉って、意味が届くまでに少しだけ距離があるんだなってその時思った。
一番きつかったのは、そのあと泣いたことじゃなかった。
泣く前の沈黙だった。
言い切ったあと、一回だけ視線が泳いで、口が閉じて、BGMもない部屋音だけが残る。
配信者の部屋の無音と、自分の部屋の無音が、イヤホンの中で重なる。
数万人が見てるのに、誰も助けられない数秒。
それで、しばらくしてから本人が笑おうとして、ちょっと失敗した。
笑顔の形にはなるのに、音が笑ってないやつ。
『湿っぽいの嫌だから、最後までいつも通りでいきたいです』
その『いつも通り』が、その日からもう二度と増えない回数のことだって分かってしまう。
最後の言葉は、案外ふつうだった。
壮大でも名言でもなくて、たぶん本人がずっと言ってきた言葉の延長だった。
『またどこかで元気に会えたらうれしいです。今までありがとうございました』
それを言って、少しだけ頭を下げて、配信は終わった。
終わった瞬間、画面にはおすすめ動画が並んだ。
さっきまで人生の区切りを見てた場所に、切り抜きと猫と深夜ラジオのサムネが並ぶ。
世界、切り替え雑すぎるだろって思った。
で、タブを閉じられないまま、真っ暗になった自分の画面だけ見てた。
コメント欄は止まってるのに、指だけが更新を待ってる。
終わったって分かってるのに、終わった動作ができない。
あの夜はたぶん、配信じゃなくて、閉じられないタブの方をずっと見てたんだと思う。
たぶんあの夜いちばん残ったの、引退そのものより、そのあと自分が普通に風呂入って、普通に寝て、普通に朝が来たことなんだと思う。
世界は全然止まらないのに、自分の中だけ少し取り残される。
でもたぶん、みんなそうやって少しずつ閉じるんだろうな。
閉じられなかったタブごと、生活の方に連れていくみたいに。
元スレッド: 配信者の引退配信を見届けた夜の話を書く(84レス)